■ 楽曲解説
ショパン 即興曲第4番《幻想即興曲》 作品66 嬰ハ短調(Chopin Fantaisie-Impromptu No.4 Op.posth66 cis moll)
即興曲第4番は「幻想即興曲」と呼ばれ、ショパンの作品の中でも大変人気がある曲です。
「幻想即興曲」は即興曲第1番より前、ショパン24歳の時に作曲されましたが、その生前には出版されませんでした。デストゥ男爵夫人からの有給の注文品であったためとも、モシェレスの作品と似ているからとも言われますが、真相は不明です。
もし、自分の死後いくつかの写譜は破棄するようにと言い残したショパンの命が守られていたならば、この曲は存在していなかったでしょう。しかし、ショパンの姉や支持者の許可により、1855年に友人のフォンタナが遺された楽譜を分類して遺作集を出版します。その最初の曲が「幻想即興曲」です。その際、フォンタナにより加筆等が行われ、「幻想」という標題も付加されました。
その後、1962年アルトゥール・ルービンシュタイン(*注)が即興曲第4番のショパン自筆資料を発見・出版します。いわゆる「ルービンシュタイン版」です。一方、フォンタナが1855年に加筆出版した版は「フォンタナ版」と呼ばれます。この2つの版には音は勿論、細かな違いがたくさん存在します。
ショパンの最終意志を反映しているのは決定稿である「ルービンシュタイン版」に違いないのですが、現在広く愛奏されているのは「フォンタナ版」であり、白石光隆も「フォンタナ版」で演奏しています。ショパン草稿の写譜・清書から出版商との交渉、住居の手配、洋服や帽子などの小物の買い物等々、ショパンのためにありとあらゆる雑務をこなしたフォンタナも報われたのではないでしょうか。
*注 アルトゥール・ルービンシュタイン(1887−1982) ポーランド出身の20世紀を代表するピアニストの一人。
(M.S.)
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白石 光隆 Mitsutaka Shiraishi:ピアノ Piano
1989年に東京芸術大学大学院を修了後、ジュリアード音楽院へ進む。
1990年ジーナ・バッカウアー国際奨学金コンクール入賞。
1991年学内におけるコンチェルト・コンペティションで優勝し、リンカーンセンター内アリスタリーホールでジュリアードオーケストラとラフマニノフ「ピアノ協奏曲第三番」を協演。
1994年、第63回日本音楽コンクール声楽部門において、優れた日本歌曲の演奏におくられる木下賞(共演)受賞。
レパートリーが広く、邦人、現代音楽の分野でも評価が高く、ジャズへのアプローチも積極的に行っている。
吉松隆、長生淳らの作品を入れたCD「レグルス回路」は山野楽器の1998年度アカデミー賞(現代曲部門)を受賞、またベートーヴェン作曲ピアノソナタ作品109とこれに触発されて夭折した我が国の天才作曲家、矢代秋雄の作品を収めたCD「109」、他にも「大指揮者のピアノ曲」、「作曲家ムラヴィンスキー」など、多くのCDをリリースし、いずれも好評である。
キングインターナショナルとのベートーヴェン・ソナタシリーズの収録を開始して、2006年には3大ソナタを収めた第一弾を、2007年には第二弾をリリース。
2007年2月にリリースした「成田為三ピアノ曲全集」は平成19年度(第62回)文化庁芸術祭レコード部門優秀賞を受賞し、各方面から高い評価を受ける。
毎年東京で定期的に開催しているリサイタルも21回を数え、意欲的なプログラミングはもとより、近年は透明感ある音に奥行きと厚みが加わり、圧倒的なリズム感と、生き生きと説得力ある演奏スタイルで、回を重ねるごとにファンを増やしている。
ピアノを金澤桂子、高良芳枝、故 伊達純、小林仁、マーティン・キャニンの各氏に、室内楽をフェリックス・ガリミア、伴奏法をジョナサン・フェルドマンの各氏に師事。
現在、東京芸術大学ピアノ科講師及び、お茶の水女子大学文教育学部講師。
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